フレットで見

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

フレットで見

クに掛けた。ピピ、と音がしてテレホンカードが戻ってくると、すぐにそれを引き抜き、戸口の澪を促しつつ狭い電話ボックスから外に出た。ガラスの康泰折りたたみ扉が静かに戻っていく。
「もしかして私のこと話してた?」
「心配してたよ」
「師匠の方こそ心配性だよね」
 澪が肩をすくめて笑うと、遥もつられるように小さく笑みを浮かべた。
「戻る?」
「うん」
 澪はにっこりと笑顔を見せて頷いた。電話ボックスの外にいると夜風の冷たさを実感する。濡れた髪はとっくに冷えきって身震いするほど寒い。早く熱いシャワーを浴びてあたたまろうと、急かすように遥の手を引いて小走りに駆け出した。

 翌日、近くの喫茶店で朝食をとってから海岸へと向かった。
 そこには、旅行のパンるようなエメラルドグリーンの海が広がっていた。湾内ということも影響しているのだろうか。海面はとても穏やかで、太陽の光を康泰反射してきらきらと宝石のように輝いている。
 ぐるりと視線を巡らせると、若い女性たちが波打ち際で遊んでいるのが遠くに見えた。微かにはしゃぎ声も聞こえる。遠目だが誰も水着は着ていないようだ。本土より暖かいとはいえまだ春先であり、さすがに海水浴をするつもりはないのだろう。
 二人は白い砂浜を歩き出した。ゆったりとした波のリズムが心地良くて、気持ちも自然と凪いでいく。澪は後ろで手を組み合わせて青空を仰ぎ、深く息を吸い込むと、あらためてエメラルドグリーンの海に目を向けた。
「きれいだね」
「そうだね」
 遥も足を止め、長めの前髪を風になびかせながら海を眺めている。その隣に寄り添いながら、澪は両手を前に伸ばして親指と人差し指でフ康泰レームを作ってみた。そうやって切り取るとますます写真や絵葉書のように見える。
「現実じゃないみたい」
PR